着物はその美しさから、着るものを引き立ててくれる魅力があります。
しかし、着用したときに「シミがついてしまった!どうしよう」と焦ることもありますよね。今回は着物についてしまったしみについてその原因から適切な染み抜き方法を解説します。
コーヒーや口紅、ファンデーションなど、汚れに合わせたやり方で汚れを落とし、きれいな状態を取り戻しましょう!
目次
1:着物のしみ抜きで落としたい汚れの種類は4つ
一口に「着物のシミ」と言っても、汚れの種類によってしみ抜き方法が異なります。
ここでは着物につきやすい4種類の汚れを解説。
汚れは「水溶性」「油溶性」「タンパク質」「その他」に分類できます。
①水溶性の汚れ
水溶性の汚れは「水に物質が溶け込むことで発生する汚れ」を指します。具体的には下記のようなものが挙げられます。
・ジュース
・コーヒーや紅茶
・醤油など
いずれも液体の汚れのため、早めの対処によって落とすことができます。
多少落ちにくい汚れも、中性洗剤を使うことできれいに落とせます。
②油溶性の汚れ
油溶性の汚れは脂溶性とも呼ばれます。油に溶けやすい性質を持つものが油溶性に分類されます。具体的なものは下記の通りです。
・口紅
・ファンデーション
・チョコレート
・朱肉など
油溶性の汚れは中性洗剤で落とすことは難しいため、ベンジンを活用します。また、それでも落ちない場合は漂白剤を上手に使うことも大切です。
③タンパク質による汚れ
血液や皮脂、卵などのシミは水溶性の汚れに近いですが、タンパク質が元になっています。そのため、洗剤を使うことなくきれいに落とすことができます。
しかし、タンパク質由来のシミはお湯で落とそうとすると固まる性質があります。そのため、しみ抜きを行う際は必ず水で行うようにしましょう。
またタンパク質由来の汚れは、時間が経つにつれ落ちにくくなります。水で落としきれなかったシミはアルカリ洗剤を活用しましょう。
④その他
これまで紹介した汚れの種類以外にも、古い着物は経年劣化によりシミが発生することもあります。また「知らないうちにシミになっていた」ということもあるでしょう。
さらにドロはねのように不溶性の汚れがつくこともあります。
原因が特定できる場合は、これから紹介する方法で処置をしていきますが、原因がわからない場合や、繊維を傷つける心配がある場合はクリーニング店への依頼も検討しましょう。
2:【シミになる前に!】ついて間もないシミへの正しい対処法は?
着物のシミは原因に合わせて対処することが大切です。しかし、できる限り早めの対処を心がけることで、よりきれいな状態を目指せます。
ここでは「汚れがついてしまった」と気づいた際にできる応急処置を紹介します。
汚れを吸い取るように軽く押さえる
ついたばかりのシミは、お手持ちのハンカチやティッシュを濡らして軽く押さえましょう。拭き取るのではなく「吸い取らせる」イメージで、優しく押さえます。
強くこするのはNG!
汚れを見つけると「シミになってしまう」とあせって強めに擦ってしまいます。しかし、擦ることで汚れが奥に入り込んだり繊維を傷つける原因となるため絶対にやめましょう。
また、インクや口紅など伸びやすいものの場合は汚れの範囲が広がってしまう可能性もあります。
3:種類ごとに解説! 水溶性のしみ抜き方法
ここからは汚れの種類ごとに、具体的なしみ抜き方法を解説します。
手元に必要なものを準備してから処理に取り掛かりましょう。
準備するものは?
まずは水溶性のしみ抜き方を紹介します。準備するものは以下の4点です。
・ぬるま湯(洗面器に張る)
・汚れても良いタオルや布を5枚程度
・綿棒(細かい箇所に使用)
・中性洗剤(DAILY SOAP / 衣類用洗剤)
シミの程度によっては水やお湯のみで落ちるものもあります。
まずは水やお湯で対処し、それでも落ちないシミは中性洗剤で対応します。
手順①着物の裏にタオルを敷く
まずは着物の裏に大きめのタオルを敷きます。このタオルに着物の汚れをうつしていくため、汚れても良いものを使用しましょう。
ただし、タオルが色落ちしやすい色合いの場合、着物にタオルの色がうつる可能性があります。そのため、白っぽいタオルを準備しましょう。
手順②お湯で濡らしたタオルや綿棒を当ててしみを落とす
次に、洗面器に張ったお湯でタオルを濡らします。濡らしたタオルで「トントン」と軽くたたきながらシミをタオルにうつしていきましょう。
ここで必要以上に強く擦ると、落ちにくくなったり繊維が傷つく原因になります。
また、お湯で落としきれない場合はこの段階で中性洗剤(DAILY SOAP / 衣類用洗剤)を含ませてたたいていきます。
ただし、着物に使われている染料によっては中性洗剤で色落ちする可能性もあります。事前に目立たない場所でチェックしてから行いましょう。
手順③乾いたタオルで水分を取り乾燥させる
汚れを落としたら、最後はしっかりと乾燥させます。乾いたタオルに水分を染み込ませます。さらに着物用のハンガーがあれば、吊り下げて乾かしましょう。
乾燥の目安は半日から1日です。
なお、血液等のタンパク質系の汚れも同様に対処できます。以下のようなしみ抜き剤を使うと、染み抜きがより手軽になるのでおすすめです。
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PRE SOAP neo シミ抜き剤
中性の染み抜き剤なので、生地を傷めず色柄物にも安心して使える洗剤。食べ物や飲み物のシミだけでなく、シャツの黄ばみなどオールマイティーに活躍してくれます。
4:種類ごとに解説! 油溶性のしみ抜き方法
次に油溶性のシミに対するしみ抜き方法を紹介します。油溶性は水溶性のシミに比べると落ちにくいため、じっくり時間をかけて落としていきます。また、ベンジンを使うため、取り扱いにも注意が必要です。
準備するものは?
・ベンジン(クリーニング用)
・白色のガーゼ(2枚以上)
・タオル(2枚以上)
・マスク
・ゴム手袋
・メガネやゴーグル
参考:「ベンジン」ってどんなもの?注意点は?
ベンジンは石油由来の溶剤で、クリーニング以外には工業分野でよく使用されています。
油を溶かす効果があり、油溶性の汚れに◎。さらに、着物に使われることが多いシルクを傷つけずに綺麗にできる特徴があります。そのため、着物を持っている方はぜひ持っておきたいアイテムです。
しかし、揮発性の高さから室内には刺激臭が広がり気分が悪くなる可能性もあります。
そのため、ベンジンを取り扱う際には下記の4点に留意しましょう。
・換気をしながら作業する
・子どもの近くで作業しない
・ストーブやライター等、火気のない場所で作業する(引火性が高い)
・目立たない場所で色落ちしないか確認する
手順①着物の裏にタオルを敷く
水溶性の時と同様に、着物の裏にタオルを敷きます。
着物を動かしていくため、大判のタオルが良いでしょう。
手順②ベンジンを含ませたガーゼでシミを落としていく
次にベンジンを含ませたガーゼで、シミ部分を湿らせます。この時、ベンジンを多めに含ませてシミ部分に乗せていくことがポイントです。
たたくたびに汚れがガーゼにうつっていきます。そのため、常に汚れていない面を当てながらたたいていきましょう。
手順③しみの輪郭部分をベンジンでぼかしていく
汚れが取れてきたら「ぼかし」の段階に入ります。シミにうっすらと輪郭ができているところに、ベンジンを塗り拡げていきます。
手順④よく乾かす
シミが目立たなくなったら、最後は乾燥させます。
水溶性と同じく、しっかりと乾燥させることが大切です。
★刺繍や金箔部分についたシミは自宅で取ることが難しいため、クリーニング店に依頼することをおすすめします。
5:まとめ
今回は着物のしみ抜きについて、汚れ別の対処法を解説しました。
汚れには水溶性や油溶性など種類があるため、特徴に合わせたしみ抜きが大切です。
汚れの原因をしっかりと把握し、適切なしみ抜きを行いましょう。